不可能性を表現する

私の場合、文学やマンガの対象は「不可能な世界」であり、道徳や社会主義リアリズムのような「可能性」や現実生活の指針を示そうとはしない。

りんごの葉っぱが羽になったら

りんごの葉っぱが羽になったら

りんごの実は大空を飛んで

笛を吹き鳴らすでしょう

鳥たちはその音色に聴きほれて

丸い輪をつくるでしょう

りんごの葉っぱが羽になったら

りんごの実は砂漠の真ん中に降りて

笛を吹き鳴らすでしょう

砂漠の小動物たちはその音色に聴きほれて

踊りを踊るでしょう

りんごの葉っぱが羽になったら

りんごの実はクジラの頭に乗って

笛を吹き鳴らすでしょう

クジラは潮を噴いて

りんごの音色にトレモロをつけるでしょう

りんごの葉っぱが羽になったら

りんごの実は夜空を飛んで

笛を吹き鳴らすでしょう

夜空の星は何も答えないでしょうが

笛の音色は静かに流れて

一晩中続く でしょう

平和の使徒

天国と地獄を別かつ空間を小さく引き裂いた

イエスは その裂け目に尻を突きだして

寄生虫の湧いた糞便を垂れ流した

黒の大地に広がる渦状のありがたき贈り物に

群がった蝿は 平和の使徒となるに違いない

犯されされ尽くされた都市の生き物たちよ

聖者の糞に糞に接吻ができるか

ゴキブリ退治のペーパーはハウスに飛びついたどぶネズミよ

今やおまえの未来に安息が与えられた

夜明け前には平和の使徒がおまえの肋骨に

聖卵を産みつけるであろうから

桃太郎の不安

桃の中にいる桃太郎

桃の中にいる桃太郎の不安は

いつ包丁でばっさり切られるかという不安

桃の中にいる桃太郎

桃の中にいる桃太郎の不安は

かじられ て いつ首をえぐり取られるかという不安

桃から生まれた桃太郎

桃から生まれた桃太郎の不安は

自分が桃を食べると 母殺しになるのではないかという不安

桃から生まれた桃太郎

桃から生まれた桃太郎の不安は 

桜から生まれたら さくらんぼのように 小さくなってしまったのではないかという不安

桃から生まれた桃太郎

桃から生まれた桃太郎の不安は

父は桃の木とセックスしていた変態に違いなく 自分も将来変態に成るのではないかという不安

桃から生まれた桃太郎

桃から生まれた桃太郎の不安は 

奇形を敵視すべきではないと知りつつも それを大きな声で言うと

仲間はずれになるのではないかという不安

桃から生まれた桃太郎

桃から生まれた桃太郎の不安は 

角の生えた人々を鬼と称して 子どもも女も皆殺しにしてしまったため

地獄に堕ちるのではないかという不安

桃から生まれた桃太郎

桃から生まれた桃太郎の不安は

自分を英雄視する日本人と自分自身は狂人ではないかという不安

桃から生まれた桃太郎の不安は絶頂に達しました

彼は悩みました

そして ある決意をしたのです 

すると 桃から生まれた桃太郎の不安はなくなりました

桃から生まれた桃太郎の不安は 

来世は角の生えた人になるという決意によってなくなったのです

桃から生まれた桃太郎は それからずっと 鬼のお面をかぶって 暮らしました

桃太郎は 百年も 千年も 一万年後も 鬼のお面をかぶったまま 暮らすことでしょう

鬼のお面をかぶった桃太郎 彼 は永遠に鬼のお面をかぶって 生きていきます

鬼のお面 鬼のお面 桃太郎の鬼のお面

夢破れし者の夢

夢破れし者が夢に包まれて死ぬ

夢破れし者の夢

地球の前の夢

夢破れし者の夢

宇宙の後の夢

夢破れし者の夢

地球の前と宇宙の後を結ぶ夢

夢破れし者が

夢を包みて死ぬ

死ぬ